お色なおしもほぼ終わりに近ずきました。
ニスを濃くし、それによって生じた本来の板の
音程の変化を、そのニスで元へ戻す調整も済み、
存在感がある、個性が出てきました。
音をオリジナルに近づける事が、この楽器のテーマでした。
①年輪や虎杢が似た材木を使用。
②大きさ・サイズ、アーチ、横板の高さなど空気容量を考え、同じに。
③厚さを同じにするとともに、年輪の違いなどによる音程の誤差を
タップにより、耳で聞き、厚さを微調整しました。・・・これは、普通、同じ厚さにしても
同じ音程になりません。 何故か、名器は 必ず厚さは隣近辺と、上下左右、裏表との関係で
デリケートに音響的に 合うようになっています。左右非対称であろうと、 ポイントの厚さが分かった場合、それを満足する条件で、厚さの等高線が繋がるように、探偵のように、、、
探りながら、、、、
④F孔の位置、大きさ、長さなどなど、なるべく近く、、、
組む前のデータ
表板 モード5・・・373Hz 70g(30年寝かした材料にしては少し重い)
モード2・・・169Hz いつもの ヴァル・ディ・フィエメは厚さは異なるが55gくらいである
モード1・・・ 89Hz
裏板 モード5・・・353Hz 110g(最大6mmにしては軽い)
モード2・・・181Hz
モード1・・・ 65Hz
しかし、これらの組む前の有る部分を支点として押さえるタップのデータは おおよそのバランスが分かりますが、支点を変えると意味しなくなります。
組むと横板の接着面と、魂柱が支点となるため、音響はまったく異なる。組む前は表が高いが、組んでコンコンと叩くと、裏が高いことがわかります。
組む前に、同じような支点を作ってあげて、コンコンと叩くと、組んだときと同じ状態の音程がわかります。
私は、組むまえに、組んだときの音程を事前に確認、理解して、製作しています。
名器のデータは、ある支点を作って はかったデータ・モード5やモード2は存在する。製作する場合、組む前にそれらの、名器のデータ(M-5,M-2)内におさまっているかを確認し、あとは
組んだ状況を作って、耳で聴き、板を叩いて厚さを調整します。 そうやって出来た表・裏板は組んだあとの箱になった時と同じなので、予想したとおり、間違いない箱を作ることができます。
その過程で、今までに聞いた数々の名器の特徴を反映します。
せっかく、出来た白木のヴァイオリンが、ニスで、バランスが無意味になったり、より一層良くなったり、ニス塗りの途中で、元に修正しながら塗り、最後また微調整をしています。
そうする事で、ある程度予想した楽器を作ることが可能になります。
今回は、横板が、ニスにより、裏板より硬さが、時間で増し、鳴りが悪くなった反省にたち、
変化しても、範囲内におさまるように、横板厚を微調整し、再度ニスを塗った。これで安心できる。 実際のハイフェッツを叩けると、早いのですが、、、、、みどりさんが持っているらしい、、、と聞いたような気がします。
ほぼ完成した状況です。・・・・・・
しかし、
写真のピントが甘いことお許しください。
中央Fの下濃いところは、手の写り込み影の影響です。Fは、オリジナルと同じ様に
切ってあります。滑らかなラインや左右対称にしたいところでしたが、その個性が別な楽器に
なってしまうため、あえて同ように、個性を表現しました。製作者としては勇気のいる仕事です。
しかし、その一見下手な仕事が、ただ下手では出来ない仕事で、アートになってしまっているように、私は感じました。位置、大きさ、ライン、全部違うFは、とても難しかったところでもあります。