ストラディヴァリ師匠とグアルネリ師匠を考えるⅡ

師匠 ストラディヴァリ先生 とグァルネリ デル ジェズ先生を考えるⅡ
Stradivari e del Gesù を考える

両者を考えてみますと・・・まったく両極端に見えますが・・・結論は・・・・外見とは違い殆ど同じ事をしています。
見た目、外見ではなく音響的な考え方の基礎は同じで、その上にたって新しい実践で道が分かれている・・・・
音に関しヴァイオリンという楽器の音を どうしたら どうなる・・という原理原則=基礎はほとんど同じように思います。
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違うのは そうした原理原則を 違う発想で・・・つまりサイズの違い、アーチの違い、構造物の形状の違い・・・そして どういう音質を求めるか?理想の違いから 原理原則を180度違う角度から発想した考えと仕事になっています。

両者の作ったヴァイオリンは両者とも各々1挺1挺厚さ配分などは大きく違います。グァルネリのヴァイオリンも1挺1挺違い、
ストラディヴァリも同様に1挺1挺異なります。
しかし、両者共に個々に共通した音色の特徴が維持されています。

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一般的に、ヴァイオリン製作者は、師匠に師事し、師匠から教わった作り方を継承し 師匠を超えるか、師匠に追いつかないか???
少しづつ良くなるよう改良しながら 経験から良いヴァイオリンを作ろうとする。長い年月作って沢山作った方が良いヴァイオリンが出来る可能性は高くなります。
しかし、原理原則=基礎が理解されていない状態、ストラディヴァリの考えが分からない現代の製作者、師匠について同じような製作をしても
大きく ストラディヴァリやグァルネリには決して近づけない。
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ストラディヴァリやグァルネリは それほどでもない!と・・・もし思っていたのでは絶対に近づくことも不可能。

ストラディヴァリやグアルネリを実際に厚さを測り、同じような木材で同じに作る、CTを駆使し3Dを駆使し同じようなヴァイオリンを作り同じような音が得られても
それは、その名器と同じようなヴァイオリンが作れただけで、そのような名器を自由に作れる技術が得られた訳ではない。


ストラディヴァリやグァルネリ デル ジェズの場合は、現代に製作スタイルとは全くスタートから、考えているレベルが違う。
ストラディヴァリに追いついたとか、超えたとか 素晴らしいヴァイオリンが出来たとしても、同じ考え方を共有し、自由にコントロールし名器レベルが作れないと超えたとか追いついたとか言えない。

作れば作るほど、彼らの凄さがいかに素晴らしいか、また距離感に絶望する。
追いついたとか、超えたとか思ったとしたら、それは既に足元にも到達していない事すら分かっていない事でもある。
絶望から 初めて光が見えるか 真っ暗になるか 並たいていのことではいかないはずです。
いくら書物を調べても ストラディヴァリの気持ちやグァルネリの気持ちが書かれたものは存在しない。
本物からの情報を、試し 結果を耳で確認するしか方法は無い。
内部の凹凸=でこぼこや、外部が滑らかでない部分など  ただ雑・・・と流しては そこまでで終わってしまう。
イマジネーションと深い疑問意識を持ち
それで こう考えてこうしたのだろう???と視野を広げて一歩一歩箱をクリアーにしていくしか方法は無い。

ストラディヴァリは、表板、裏板の振動からくる音質を一番重要に考えています。横板は ほぼ一定した厚さで薄い(一部分を除き)。
横板は、きわめて音質に影響を与えます。厚い部分で(特定部分を除き)1.2mm、薄い部分で1mm以下、平均すると1mm前後。 つまり300年前製作時には1.1mm前後であったと考えます。
裏一枚板では、横板は往々に別な年輪が密な板も使っている。
その方が音が良いからです。

表板では、左右別な木材を使う事もしばしばある。
ありあわせの木材を使ったという説もありますが、装飾したヴァイオリンにそんな無神経な使い方はしないだろう!
実際に試してみると分かります。 その音の世界の深さが理解できる。

年輪が広い方をトレブルサイドに使えば、高音が美しく透明感がある響きを得やすい。密な木材を使えば、エレガントな緻密な響きを感じる。
バスサイドに広い年輪の材を使えば、柔らかく膨らむように良く響く、もし同じ厚さで、左右違う年輪の材を使えば
厚さでは表現できないデリケートな差をつけられます。
この事は、ストラディヴァリもグアルネリも考えていました。実際に試してみると そうなっている。
この事も 人によって感じ方が違うので さらに複雑になっていきます。
横板では・・・・
ストラディヴァリの1mmと今の1.1mmでは同じ1.1mmでも熟成した1mmでは大きく違う。
同じヴァイオリンであれば、横板が厚いと 音に張りがでます。薄いと柔らかい音質になります。
同じ事が、厚いと硬い音質になり 薄いと締まらない音になります。
演奏家によって、柔らかいと感じたり締まらないと感じたり好みでも感じ方が違ってきます。

横板が薄いヴァイオリンを力いっぱい弾くと、締まらない音になってしまいますが、滑らかにデリケートの弾けばその良さが感じられます。
全体に柔らかい音質でもE線に芯がありシャープに響けば全体に音質は締まる。
箱の作り方でも180度変わります。

横板は、表、と裏が どういう厚さで、どう考えるかで音質が決まる。横板に隣接する部分の表板・裏板が薄ければ良く振動しますが、横板が薄ければ、柔らかい振動のまま音になり、音質は弱かったり、締まらなかったりします。低音では柔らかく良い方向へ向かう事もあります。高音では、逆に弱さ、締まりの無さが際立つこともあります。表、裏が薄く、隣接する横板が厚ければ張りがあり、大きく強く振動します。

横板を一定の薄さで作るストラディヴァリは、表、裏で横板が薄くて丁度良い振動に=音質になるようにしている。つまり渕周りをあまり薄くせず、ライニングも重要になってきます。箱の剛性も保てるようになっています。
そうした設定で、表、裏板を設計しています。
一方グァルネリは、初期にはストラディヴァリと同じような手法も使っていますが、
晩年にいたる過程では、箱全体でいかに振動を滑らかに強くさせるか?という世界観に到達していると感じます。
全てではないと思いますが・・・
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グァルネリは、一個のヴァイオリンでも横板で厚い部分で1.6mmくらい、薄い部分で1mmの物もあります。
グァルネリは、横板も駆使し音を創っています。表の厚さに対して裏板の厚さを考え、それを横板の厚さで
仕上げる。箱を振動が自由に回れるようにしています。そのため、楽器によってはライニング断面の形状を変え、質量を減らし、振動の阻害要因を減らし、パーフリングの彫り込み部分も振動のロスがないように深く彫っています。横板は部分部分で厚さを変え、総合的に考えています。ブロックも年輪の幅で高音低音を考えていたようです。
コーナーブロック至っては、それを囲む表、裏板 横板部分を少し薄くしブロックが邪魔しないように工夫しています。
ストラディヴァリはコーナーなどブロック部分では裏板に限り、振動の邪魔にならないように工夫しています。

グァルネリのような厚い厚さで、ストラディヴァリの外見仕様で作ると、鳴らない楽器になるだろう??? そういう理由からだろう。
 ストラディヴァリの厚さでグァルネリの外見と仕様で作ると案外イケル部分も多い。しかし横板が厚いと流れが悪くなるので ロスになります。
しかし横板を薄くすると、ひ弱な音質のヴァイオリンとなってしまうだろう・・・

ストラディヴァリのように全体に薄めのヴァイオリンはその薄さを補う縁に厚さ、ライニングを備えています。

全体、全部薄いと箱として成立せず、渕周りの厚さとライニングの強度が必須となります。
ストラディヴァリもグァルネリも どんな高音を作ろうか??どんな低音作ろうか??その理想で各部の板厚を考えている。その基本は全く同じです。

ブロックは前の述べたごとく、二人とも振動の邪魔にならないように工夫していますが、全然違う手法を取っています。

ただ、良く言う ストラディヴァリの秘密は、秘密と言えそうな作りは、グァルネリも同じことをしています。
つまりグァルネリも知っていたという事です。
つまり、300年前の名工達のレベル、その世界では普通の仕事という事になります。
私はストラディヴァリとグァルネリしか知りませんから、同じ時代の名工達が同じ事をしていたか?については書けません。

そうした考え方、音の理想の違いが、アーチの差異、大きさ空気容量、輪郭、ヘッドの形状、板の選別など、各々二人は洗練されていったのであろう・・・・と推察しています。
アーチの形、大きさの影響(空気容量、立ての長さ、横の幅の大きさ、横板の高さ、アッパーロアーの比率、スクロールの形大きさ・・・などは沢山作りながら検証し理想に近づけていったであろうと思っています。
低音をどんな音質で どう鳴らそうか?高音をどんな音質でどう鳴らそうか?作業的には180度違う厚さで作ります。
板を薄くすれば、薄くて強度を得られるようにし、板を厚くすれば、厚くても振動しやすくする・・・・それがシークレット オブ ストラディヴァリでもあり、同時にシークレット オブ グァルネリでもあるのかも知れない???


高音を美しく響かせる手法、低音を良く響かせる方法もいくつかありますが、やり過ぎると効果が半減してします。高音を良くすると低音も良く鳴ったり 低音を良くすると高音も良く鳴る場合と、高音が鳴らなくなる場合もある。この事は 欲を出し普通のヴァイオリンを簡単に名器にしようと良からぬ考えを出すと・・現代のヴァイオリンでは・・そうはならない。


そうたやすく、良い音のヴァイオリンは作らせない!作れると思いなさんな!・・・と師匠達が言っているようです。 1挺1挺 すべての箇所に意味が有り作られているからです。

そのデリケートな違いも、演奏者で 感じられる人と、まったく感じられない人がいます。感じられる人はすごく驚きます。聴いている人もまったく同じです。
ほんの少しの事なのですが 大きな事です!

本物以外・・・同じような そういう楽器の話しをネットの会話でも見た事がありますが、、一般的な知識で 判断されると、ここが薄いから ウルフが少し出るなど また あそこが厚いから鳴りにくいなど 本当は そこが大事な場所で良い楽器の特徴であっても 問題個所と判断されがちです。
素直に信じると落ち込む事でしょう! それらを真に受け、薄い箇所を足し、厚い箇所を削ってもらったら  普通のヴァイオリンになってしまいます。 また雑音のように聞こえる音 本当の雑音は原因が有るのでしょうが シンプルな音色以外に雑音に聞こえる良い雑音??も存在し 良い楽器にもあります。 普通の楽器基準で考えると 大分違う事は確かです。必ずしも万人に心地良い美音ではないのです。本物を知る人には なんとも心地良く感じる事でしょう!


ストラディヴァリもグァルネリも どこを見ても音に意味がある要素の塊と言えましょう。気が付くか?気が付かないか?
そうしたことから、ストラディヴァリ先生とグアルネリ先生を考えると・・・・いかに木を厚くても振動させるか、薄くてもしっかり振動させるか?いかに薄く丈夫に作るか?振動の流れをスムーズにさせるか?
おこがましいのですが、敬愛の念を持って永遠に師匠と仰がせていただきます!・・・・・・
by cremonakuga | 2016-10-18 00:23 | ◆ストラディヴァリとグァルネリ | Trackback | Comments(0)
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