ヴァイオリンの音色 シルバートーン&ダイアモンドトーンについて (2015・Gennaio追加 )(2021追記)

久我ヴァイオリン工房

ヴァイオリン作りにとって、やはり
音がどうか?ということに 最初に突き当り、また永遠に到達点がありません。
ヴァイオリンの音色 シルバートーン&ダイアモンドトーンについて (2015・Gennaio追加 )(2021追記)_d0040395_2017267.jpg

ストラディヴァリウスに代表される・・・ダイアモンドトーン あるいは、オールド楽器のシルバートーン???
分かるようで、分からない????

聞く人の感じ方で違うと思いますが・・
ダイアモンドトーン・・・透明で、クリアーで、キラキラした澄んだ音色??
なんだか、同じ語意を並べたような気がします。
私がそう感じる時???ダイアモンドトーン??特にデルジェズなどで、E線は、勿論ですが、A線に加え、D線G線までがクリアーで、澄んだ音色の時、ダイアモンドトーンと感じます。
ダイアモンドトーンは、厚さ以前に楽器の大きさも重要と考えます。

シルバートーン・・・いぶし銀のような渋い音!?・・・いやいや・・・では無いように思います。
銀の鈴のような香り・・・チリチリした銀の線が、一本しっかりとした芯の有る音に、より緻密な銀のようなキラキラした微細な粉が絡みついたような、乾いたようで、心地よい音・複雑な音色を示すと思います。・・と思います。楽器の大きさの影響が少ない気がします。

弦で言いますと オリーヴのE線ゴールドは そんな雰囲気の音色を聞くことができます。細かな振動を感じる音色です。

弦自体は細く キラキラが細かな気がします。 そうではなく楽器自体がそういう効果を出します。
両者の違いは、私が個人的に感じるのは、弦の場合は言い方によっては ”うるさい” とも感じます。
もう少しスッキリクリアーの方が良いのではと・・・
箱自体のでは 耳にそういう感じを与えません。独特な魅力があります。

つたない経験ですが、10挺くらいのストラディヴァリウス&デル・ジェズの音をかたっぱしから音出しした時、すべてE線は、しっかりした太い音で、クリアーだった!

1挺のストラディヴァリウスを除いて、総てG,D,Aは、霧の塊が転がるような感触の音、言われてみればシルバートーンかも知れない????
その1丁は、全弦が、キラキラしていましたが確かストラドでした。
総ての弦に こまかさ振動が付着しているような倍音がしました。
新作のイタリアンにも見られる音色でした。
どこからくる音かはおおよそ想像できます。

でも、その辺は、弦が新品の時にも感じますから、定かではありません。
しかし、この音は、ある程度の楽器=私の楽器でも! 上手な人が弾き込むとそういう音になる。

自分が自分のヴァイオリンで、シルバートーンを作る時、実際の名器の経験の音とは違う事を感じます。
上記のダイアモンドトーンもシルバートーンも、市販の現代のヴァイオリンでは聞いた事が無いから、

やはり正しいのだと思う事にしましょう・・・・
なぜなら、マニュアル通りに作っても、そうはならないからです!

ただ、2挺名器と現代のを弾き比べてみないと、実感は無い・・・

クレモナ名器を調べると、かれらの技術の高さが良く分かる、工作技術ではなく、音をコントロールする技術がです。熟知していて、かつ進化しつつ複雑なトライをしている様は、見事としか言えない・・・現代でそんな事をしている人も聞いたことが無い、せいぜいCTを使って3Dでコピペ・・・板の動きをコンピューターで解析し動画にし、板はこういう動きをしている・・・と、研究している製作家がいる・・・がクレモナのいにしえの師匠達は、やはり次元が違う。  頭と、手で今も同じ原始的な道具しか使っていない。

シルバートーンは、ついやり過ぎ音量を落とし、リカバリーに時間を取られる。そうしますとシルバートン度が少なくなる・・・コツは少な目にし、あとは弾き込みで時間を掛ける・・何んでも腹八分目くらいにしておき、熟成で、10割に近くする・・・最初から100%にすると、売るにはお客が喜び良いが、先を考えると、80%くらいに留めるのが、結果良好といえよう・・・・

今日も、昨日も、音を探り、作る毎日・・・・・・・・・・・

最近、音の遠鳴り・・・遠達性・・・指向性・・・は、G,D,Aは比較的容易に安定させられるが、E線は、
難しい・・・一般的にはE線は、どうやっても良く鳴ると言われますが、
それとは別に、はっきりF字孔から音が飛びだすような状態は、シルバートーンに仕上がった時、
特に、それを感じます。

Ps.そのE線が、いちばん大切だとも思います。
ヴァイオリンはソプラノ楽器ですから!

ちょっとの変化を敏感に感じると、その変化が いちいち気になってしまいます。
もしかしたら、あまり分からないことかも知れませんが、私が分かるという事は、いけない・・
最近、綺麗な音のE線が、オールドオ名器の音が出て、もっと良い音にしようと、微調整すると、新作の倍音が聞こえるE線に変わってしまった。
アレアレ~・・・
また、最初からやり直しだ!
それほど、デリケートな構造・・・音響的な構造は!
ほんの少しのバランスの上に成り立っています。

良く鳴る構造・・・
表板、裏板のバランスは、ネックを持ち(弦には触れず)、指の関節でタップした時、
A.綺麗な音で軽やかに良く響く
B.良く響かず、詰まった音。低めな音

さあ、どちらが良い状態の表板と裏板でしょうか?

回答Bが正解です。表、裏の反応が速すぎて、同調し一つに聞こえます。

表板、裏板を同じように持ち、指の腹で、ボンボンとタップしたとき、

A.軽やかに良く響き音が伸びる
B.ボン、ボン、ズン、ズンと重い音で、鈍い音がする

さあ、どちらが良い状態でしょうか?
回答・・・Bが正解です。

Aの状態は、ふつうに良い状態です。Bは、最高に良い状態です。
Bの状態は、Aの状態から弾き込みでBの状態に変化しますが、出来立てからBの状態であれば、
それに越したことはありません。

なぜなら、表・裏板が、相互に敏感に反応すると、表、裏が単体で振動しないため、表をタップしても、裏が抑える状態になります。魂柱の強さでも起こる現象ですが、魂柱が強くても弱くても、良い条件のバランスでは、Bになります。
AでもBでもないバイオリンを魂柱の強さで、Bになるように、一般的には調整しますが、バランスが良いヴァイオリンは、魂柱が強くても、弱くても、タップ音、感触は、Bになります。
製作するときにはBになるように心がけています。

Bは、音色は別にして、反応が良く、強く鳴るからです。

一般的には、A=魂柱を長くししっかり立てると、裏をタップしたとき カンカンと良く良く響きます。バリバリ弾け、明るい温色でコンチェルトなどには良さそうですが、微妙なニュアンスが出しにくくなります。ピアニッシモが出しにくくなりがちに・・その楽器は経年で箱が安定すれば繊細は表現も可能になります。
B=弓の繊細な操作で音色がに出しやすく表現範囲が広がりピアニッシモも出し易くなります。魂柱がそれより短めになると暗い温色に傾き、輝かしさが減少しがりになります。それくらい魂柱の長さと位置で楽器が別物になってしまうため 調整が重要です。同時に弓の性能が大いに関係してきます。
Aでも、引っかかりが良く、柔軟性がある弓では、上手に弾けば弦を押さえないため、微妙なニュアンスが出せたりします。Bは、引っかかりが弱い弓では、押さえ付ける必要性が増すため、弦も振動を抑えられ より暗い音色できらびやかさが減ります。一方で高性能の弓では軽く音が出せるため 明るい音色、暗い音色がコントロール可能になります。製作者的には魂柱少し強めAにして置けば無難に髙評価を得られます。ハイレベルな演奏を期待する場合には、難しい絶妙な魂柱長さが必要になります(湿度。基音の変化も影響されやすくなります)いろいろ個性の楽器を作るため それぞれの個性でだいぶ違うため、今も難しいなあと感じます。

もう一付け加えるとすれば、魂柱の状態、位置は別にして その強さ=長さが弦を張って安定した状態で表板が元の位置より0.5mm程度上がっている場合、強く良く鳴りますが、概念的に0.5以下で0.2mm~0.3mmのイメージ=下がっていないが、ほんの少し上がっている状態で弾き込まれると格段に音質は良い。
同じ楽器でも絶妙な長さで音質が大きく違う。
魂柱が長い(0.5mm以下)と明るく良く鳴りますが音質が丸くなります。スレスレで下がっていない状態は、複雑な倍音が感じられ綺麗な音がします。 ホールでは、その音質が良くわかります。楽器でも違いはありますが、裏板が厚い楽器は、魂柱しっかり目の方が良い場合もあります。
好みなどもありますが・・・・


追記2015,11、05
思い出した事で、ヴァイオリンのF字孔の2つの目玉の隣のウイングの幅・長さ・形・厚さは音色、強さの要因の一つで、楽器の個性決定に大きく関わっています。ウイングは極めて激しく振動する。厚ければ大きく強く振動し、薄ければ弱く振動し、幅が広ければ強く振動する、狭ければ弱く振動する、また長ければ弱く、短ければ強く振動する。左右、上下の4箇所の振動が同時に発生するから、一致したとき、4箇所違う時、音質が大きく違う。もし4箇所が薄すぎると音量が弱い楽器になってしまう。

追記2015,12、09
重複するかもしれませんが、F字孔の外側から下部のあたりまでが、バランス的にしっかり作られると倍音が特に綺麗に出る状態があります。しっかり過ぎると鳴らなくなりますが・・・・・また箱の容積が小さいと高音は良好でも低音の満足が不足しがちになります。また渕(パーフリング付近が弱くならないように)が薄いと倍音が際立ちます。薄い=美しい音=弱い・・・紙一重です。 ヴァイオリンは渕の加工で決まります。
適度に薄くて強くする方法で作らないと良い音は作れません。 大抵は薄くすると弱い楽器になってしまいます。ここぞという時強い音が出せない楽器になります。音色は綺麗でも! そこもストラディヴァリやグアルネリの秘密になるかも分かりません。

※追記2015年1月に思う事・・
シルバートーン・・・は E線は まずハイポジションまで高音がしっかり出る そして一番上、指板最上あたりでも綺麗な音が出るように作ることが必要です。
そうすることでE線の音色が深く多様性を持つ E線の複雑な振動が可能になる。
そういうE線は概してシルバートーンになる。

一番上まで、音の線がしっかりしていてクリアーに鳴る時、ダイモンドトーンかな?という音色が得られる。その場合、ADGとも同じようにクリアーな音が出やすい。 どこをどうするかは書けませんが、総合的な事ではありますが、その中でもF字孔周りの張り(バスバーも関係しますが)と強さがないと出しにくい。

シルバートーンは 新作ヴァイオリンでも作れる。テクニックで可能だが、300年が加わればそのクオリティーが増す。
356mmでも、358mmでも横板高さ30mm~32mmでも可能。

ダイアモンドトーンは、シルバートーンと同列に考え気味ですが テクニックもさることながら、そのクリアーさは・・箱の大きさ、内部空気容量、板の厚さ・・全体の作りが関係するので そうたやすくないと思う。ヴァイオリンは、356mmくらい、横板高さ29mm~30mmくらいが作り易いと考えます。

木が極めて古くなると、それだけで別次元の音が出る、それにくわえ上手な人が、正しいポジションで弾き込む事で、どんな厚さ配分であれ、美しい音のヴァイオリンになってしまう事実も有るし、ならない事実も有る。
ただ、300年は待てない・・私は1年も待てない・・良さの段階は別にしても出来た瞬間から良いと思えないと困ります。



再追記・・・しかし・・しかし・・・どんなに良いヴァイオリンであっても、良い調整=その楽器に最適な調整がなされていないと 聴く人に感動を与えるが届かない。 どんなに素晴らしい演奏であっても届かない。

それは、弾く人が気持ち良い調整ではないし、弾く人が聴いている音が 聴く人に届いている音でもない。
つまり 調整する人が気持ち良い音でもない。
調整する人が、聴く人に届く音を感じ取り 楽器にとって一番良い調整をする事が必要になってきます。
調整する人の経験も大切ですが、感性が重要となります。
素晴らしい演奏家は、聴く人に届く音を、弾きながら感じ取っています。

表板が、魂柱が無く駒も立たない状態の位置より弦を張って ほんの少し上がっている状態でないと、音に張りが無くなります。艶も無くなります。シルバートーンが出る楽器も出なくなります。音がフラットになります。
特に裏板が厚い楽器では、顕著です。

フラット手前の音は、弾く人には柔らかく心地よく感じられ易く 軽く音が出せて楽で良く感じられがちです。
残念ながら聴く人には、心に届く感動する音質にいま一つで 普通の音になってしまいます。
紙一重です。

※追記2015・・・ストラディヴァリやグアルネリ・デル・ジェズの特徴的な音質は、聴く人が聴けば分かり、弾く人が弾けば それらにしかない特徴的な音と弾き具合は、分かります。しかし、それらの名器を弾いた事がなく、意識して特徴を理解していないと、誰でもそう簡単には分かりません。
その特徴的な、音質や弾き具合は、大事な部分をオリジナルと同じに作らないと再現できない。市場にある一般的な名器の厚さや、CTスキャンの厚さのグラデーションでは似たとしても、肝心な再現はできません。なぜなら、それらの厚さは、厳密には本物と少し違うからです。ほんの少しで大きく違ってきます。それが名器です。

※追記2021・・・ソプラノ楽器のヴァイオリンの高音=特にE線の音質について、普通(この言い方は普通の楽器を下に見ているような言い方で良くないのですがすみません)私の楽器も含め 普通の楽器は、完成しますとE線はだいたい良く鳴ります。個性はさまざまです。7千円の某国製の白木のヴァイオリンですら鳴ります。
その個性ですが、ストラディヴァリやグアルネリのE線の音質は、7千円のヴァイオリンが鳴る音質をベースに持っています。その上に、いろいろな要素が加わり、個性が出来上がります。
①良質な木材
②表板裏板の厚さの音響的な組み合わせ
③ストラディヴァリはストラディヴァリの方法で、グアルネリはグアルネリの方法で 同じ作業を おのおの複雑な方法で作りあげています。
④300年+αの経年変化
③がいわゆるシークレットと言われている部分です。E線を鳴らす方法を施すと、中低音も変化します。驚くような現象を経験します。抜ける様な音質になっったり、弦をしっかり捉える様に運弓が重くなったり、E線は一本芯が通ったり、また4本の弦に細かな倍音が発生します。 ミラクルです。しかし、過剰に施すと音量が激変します。上手にその様にこしらえた楽器が、いろいろな場所で弾かれた時、世界的に有名な演奏家の耳にとまる事を経験しています。ストラディヴァリを使う演奏家、使って板演奏家の方々です。多分 同じ様な感触の音を感じるのだろうと推察しています。


by cremonakuga | 2014-05-13 20:17 | ♪♪音の謎♪♪♯♭ | Trackback | Comments(0)
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