ヴァイオリン製作過程 名工達の疑問・・・

久我ヴァイオリン工房
cremonakuga violino
昔の名工達のヴァイオリン、同じ年代作で、大きく違う音色の意味は、?大きな意味で、同じ製作者である音色は分かりますが、太い音、繊細な音・・・・いろいろ有ります。それはどうして???
この写真は 在学中に1泊2日の遠足でヴァル ディ フィエメへ その森で ヴァイオリンの表版の木に囲まれ撮った写真です!
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                 (Val di Fiemme、 Italy)
昔の名工達は、板を削っていて、厚さを、どこで止めたのか???
もちろん、大きく厚さのデザインが異なる場合もありますが・・・・・・

私の場合・・・ヴァイオリン製作で、製作を始め、まず考えることは、
①こういう形で、こういう色の楽器にしよう
②こういう音色にしたい・・・⇒こういう音色にしよう
③どうすれば、そうできるか????頭に図面をひく
④材料を選ぶ

・・・・と、製作が始まります。
その中で、特に音色、音量に関係する箇所の厚さが、キーポイントで難しいのですが・・・・

製作後に、外から対処することが可能ではありますが、

昔の名工達は、どうしたのだろうかと?と思う・・・・・

例えば、私の経験では、ある箇所を予定より薄くした場合、音色はより繊細な、特にE線のハイポジションは魅力的な音になりますが、同じ個所をもう少し厚くすると、E線は太く温かみを増します。ある場所とは、
いろいろな場所で、表、裏、横、ネックからスクロールに至るまで、いたるところに存在し、製作者誰もが、知っていたり、知らなかったらり、何らかの形で手が加えられ、高音が良かったり、不満だったり、結果にばらつきが出たりして、苦労するのだろうと思う。その点で、正確な仕事をする製作者は、よくも、悪くもバラツキは少なくなる。アバウトな製作は、偶然良い方向へアバウトが働くと、良く、そうでないと悪くなったりすします。

音響的な構造を理解していれば、重要なポイントを大事に扱えば、思った方向へ向かう。
どちらも魅力的ではありますが、どちらが適当かと、決定に悩みます。そんなときは、それに近い実際の名器の音色を参考にします。
それも、0.1mmの世界で、変わり、弾き込みで変化するので、その先を予測しながらは、息が詰まり、どうしたら良いか気がめいることになり、
アバウトは、重要な事以外は、アバウトさを通すことがイタリア的のようだ。
そのアバウトさが、大きな世界を作ると信じたい。


しかし、例えばストラディヴァリウスで、アントニオの楽器でも、コンサートで聞くと、どこまでも繊細で美しい楽器があったと思えば、音量が有り、線が太い楽器もあります。
同じ年代に製作されていて、あれだけ違うのは、ほんの少しのさじ加減できまる。出来た時の音色の差、個性は300年弾き込まれることで、より洗練された個性として熟成されてきたのではないだろうか???

私感ですが、厚さは、経験値から、その時の感覚で決まり、そのまま完成をむかえていたのではないか?

私のように、一つの音の目標に向かって、完全に近づけるよう修正しようとする。それは難しいことで、時間がかかり、彼らは、まずそんなことはしていない!???

出来たままで、良しとしたのだろうと思います??個性として???問題が有る場合は除き。

それを決定する条件は、表板、裏板とも、単体で、一番綺麗に良く響く瞬間で、厚さを止めることです。
人間は、もう少し、もう少しと思う、そこを過ぎると、音色が良くも悪くも変わる。そうしてわかることがある。

ある箇所は、ピークを少し下ったころは、低音は、少し、こもった深い音色になるが、全体に音量は減ります。つまり箱が鳴り過ぎるが、内部で消耗する感覚になります。

一方ピークで終了した場合、開放感があり、大きく鳴る。


※失敗をどう成功につなげるか・・・当たり前の事、マニュアルな事をしない事で、たびたび失敗という事になる。思ったような音から外れてしまう。そこでガッカリします!・・・が・・そこで終えるとそこまでヴァイオリンで終わる。そこで考える事が大事で、なぜ なぜ なぜと突き詰め、なぜ失敗だったか???のメカニズムの理由まで突き止める事が出来ると、どうすれば良いかの道が見える。
昔の名工から学ぶなら、まず同じ事をしてみる。そしてその意味を理解し、現代の作り方とどう違うか学ぶ。
やるなら、一度やり過ぎて失敗することを恐れずとことんやってみる。
そういう失敗を重ねると、失敗が怖くなくなり、失敗を回復させ逆転できるようになってくる。つまり気が付かないうちにリカバリー能力=力が身に着く。
厚さの分布の意味もわかってくる。すると当たり前の作り方の意味、マニュアルの意味がより分かり、名工の名工たる意味の違いも分かる。なにをなすべきか?やっと見えてきます。
それでも、やる度に想定外が発生し、同じ音のヴァイリンが出来ないのがヴァイオリンです。

きっとストラディヴァリもグァルネリも同じようなことをしていて、そのピークを探って厚さを決めていたのだろうと300年前に思いを馳せます。

結論は、薄く作れる軽く強い表版=縦、横、ねじれなど強く しかし 軽い比重なのがイタリア材。
世界には同じような板はありますが、良く鳴る以上に良い音質も木で決まります。
そして、厚さのグラデュエーションは、総て異なるノウハウで 良質な木材が有ってこそ活きてきます。あとは、それらを加工するための音響的な経験と感覚、技術・・・・そして美術的センスが名工達には兼ね備わっているようです。
ストラディヴァリ先生 グアルネリ デル ジェズ先生から学ぶことが一番確かな事である!





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by cremonakuga | 2013-02-08 12:24 | ♪♪音の謎♪♪♯♭ | Trackback | Comments(2)
Commented by スーサン at 2013-02-12 10:03 x
ピークで止めるのが難しいんですね。何処がピークかを聞き分けるのも
ポイント!!!
Commented by cremonakuga at 2013-02-13 22:17
こんにちは、しかし、やり過ぎ、一時的な失敗が教えてくれます。どこが限界かということを、それが次につながります。
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