二人の巨匠のヴァイオリン製作を 探る
私の手で支えられている師匠達の2挺のヴァイオリン Antonio Stradivari 1709 phto by Cremonakuga (from Hill book of "Antonio Stradivari his life & works") Guarneri del Gesu 1744 Photo by Cremonakuga (from The book of "Guaeneri del Gesu Ⅱ") 300年前の世界、ヴァイオリン名器、製作方法を、その音色と、タップ音から 厚さの変化を探り、300年の時間を さかのぼる。 夢と苦労の連続・・・・・がつづく・・・ ストラディヴァリウスと、ガルネリ・デル・ジェス…の楽器の関係を考える! ストラディヴァリ特有の、滑らかなG、D線の音質は、どこからくるのか? 自分の楽器は、低音が響き過ぎると…言われたこともあった!(ストラド晩年は低音は,良く鳴る) 良い意味にとって、誉め言葉と受けとめました。 もっと、良い音を創るためには…・・ その音質を意識的に操作するために、 昨年創った、A'Arcobalenoで試した。 いろいろな箇所を、いろいろな状況に変化組み合わせて、音程的に組み合わせてみる。 やはり、厚さ、左右非対称の、裏表の板の組み合わせ。 ほかにもいろいろな組み合わせや、方策はあると思いますが、 また、1715年あたりは、 その差は少なくしたほが良いようだ。 ヴァイオリンの表裏の、有る部分を完璧に合わせること、 また、裏板の関係で、反応と、透明感を出すことが出来る。 そして、特にE線やA線のトリルなどの時に、感じることが出来る、独特の美しい音質は、 ストラディヴァリウスも、ガルネリ・デル・ジェスも、殆ど同じ作り方をしている・・ことが理解出来る。 しかし、その基本の厚さが決定的に異なるが…・ いかに裏板を、扱うかで、その音質を操ることが出来る! 自作の近作ガルネリと、ストラドの2丁を、オリジナルと同じように創り、目標の音質に近づけるためには…・・ 共通点を、探し、模索し続けた。この1年半を費やした。 良く鳴らすのは、共通している。 音質・倍音の出方も、共通しています。 低音を強く鳴らすには、 高音を鳴らすのは、 表板の中央が薄い楽器を鳴らすには…・ 表板の中央が厚い楽器を鳴らすには…・・ ガルネリ独特の音質はどこからくるのか…・ ストラドの音質はどこからくるのか…・ 20数年創ってきて、この1年半の集中で、全体像が、見えてきた気がします。 ストラドも、ガルネリも基本ポイントは、同じで、彼ら各々の理想のイメージから、板の厚さが変化する。 しかし、有る部分は、耳で聞いて、ピッタリ有った時に、あきらかに素晴らしい音質になる。 やはり、単に、板の厚さだけでは、不可能です。 そして表板が、一番大切という,一般的な常識は、正しいですが、表板と いかに裏板を音響的にピッタリ組み合わせるかが、 正確な、表現は、どこが音響的に交差するか…・・ 『音響的な合致と交差』と呼ぶことにします…・が音質創りに大切…・ 裏板も、やはり、とても大切です。 裏板は、素材は良い方が、それに決まっていますが、、いかに それらを扱うかを知っているかが、音質の勝負かもしれません。 ①素材の選択 ②箱になった状態での音響的に的確な厚さの配分 ③音響的に、狂いが無い正確な仕事 ④そして美意識 ⑤お手本となる名器の音響的な知識 ⑥燃えるような情熱 良いヴァイオリンを創るためには、これらが必要な条件かもしれない。 ……と自分を 追い込む! 楽器の箱の全体総てを耳で聞いて削る作業は、大変な作業です。 ヴァイオリン創りは楽しい…などとは言ってられない。 なれないと、命を削りながら…になりそうになる。 この作業は、何台もこなしましたが、その作業に費やす集中力はかなりハードだ。 おおかた出来あがった1丁のヴァイオリンの厚さを100%耳で削る(耳で聞き分け削る)は、1日、10時間作業したとすると、5日間くらいかかる。 なぜ。こんなに日数がかかるのかと言いますと、1ヶ所を削り、隣に合わせると、隣が弱くなるのでズレが生じます。、 修整に修整を重ねるからです。 その度に、全体を少しであっても確認しながら削らねばなりません。 全体を3回も4回も少しずつ削らねばなりません。 現在の、ストラドモデルなどを製作する時も、同じような行程を行いますが、 薄い場所、厚い場所などメリハリがあり、楽器をブロックごとに合わせる作業、 基本ポイント、応用ポイントを合わせたり、ずらしたりする。 そしうして合わせる方が、理にかなっていて、創造的で、私には向いています。 左右音程的に同じに合わせるのと、ほんの少しずらしたのでは、ほんの少しずらした方が、 私には,美しく感じます。 名器に近い音色は、少しずれているほうが近いと感じます。 (これらは、バスバーが着いた状態で、箱の状態でのことです。) 楽器としての音の幅も加減が可能で,自分が入り込む余地もあるように感じます。 そして音の抜けも良く、好きな音質だと感じています。 同じように1週間くらい なんのかんのと、かかってしまいますが、ストレスを感じません。 どんなに大変な作業でも、ストレスを感じていては、良いものは出来ないのではと思うからです。 どんなに大変な作業でも、楽しくなければいけません。 ヴァイオリンの板は,渕を固定されています。渕に近い場所は、強いので、タップすると、高いタップ音になります。 反対に、中央部は、渕から遠いので弱くなります。 当然厚さが多く必要になります。 厚い部分を1ヶ所削ります、そこが少し弱くなって、隣にも影響し、隣が少し高くなります。そこを削ると、本来適正な強さなので、削り過ぎになります。他の強い部分を削っていくと、 結果的に見掛けタップ音が高くなっているので、低くなってしまう事になり、他も含めて全体をやり直さなければ済まなくなる訳です。 しかし、理想的な調整が出来た時の厚さのラインを調べたため、全体の10%くらい作業して そこから、厚さのラインを推測することが出来ることを発見しました。 ややこしくて、理解が難しいとは思いますが、 音の世界は、不思議で面白い世界です。 予想したように、そこを強くしたり、弱くしたりすると、音は正直に変化してくれます。 ヴァイオリン創りは、まさしく、樹との対話です。 現在は、新しいヴァイオリンの型を製作中です。Gパターン Gは、少し大きい為、356になるように、修整しています。 PGよりは、型自体は、左右対称に近いが、Cの内側は、やはり、違う、 微妙なのですが、これが曲者です。 なぜなら、F孔を切る時に、その開き具合が、左右されるからです。 左右1mm違うと、F孔の開き角度のバランスがおかしくなってしまいます。 なかなか、苦労するところです。 表板の役割・・・・高音、低音をどう扱うか、音色をどう作るか?の主張を表す。 裏板の役割・・・表板の主張を、効果的に、助ける役目。また、表板の主張を、デリケートに仕上げる。 そして、表板の音色、音量の主張を強くしたり、弱くしたりさせることが出来る。 ・・・・つまり、表板の変化で、裏板も変化させなくてたならない 側版の役割・・・表板・裏板の音響の考えを、それらを繋ぎ、また弱くしたり、強くしたりすることが可能だ。 側板が、高ければ、内部の空気量が増え、また、伝達速度が遅くなる。そして、同じ板の厚さなら弱くなる。薄くしたのと同じになるから、全体にイメージとしては、柔らかな膨らむ音質になる。高音も柔らかな音質になる。 逆に高さが低いと、同じ厚さなら強くなり、まら音の伝達が速くなり、内部空気量が少なくなり、 高音特性、レスポンスが良くなる。イメージとしては音に張りが出て、シャープな音質になる。 ストラディヴァリは、限界まで薄く作っている。裏板の一番厚い場所も薄いのもあるが、厚くしているのは、その分、周辺部を薄くできるからだ。グアルネリも裏板の中央が厚いのは、それなりの大きな理由がある。 反対に表板も同じだ。 ガルネリは板が厚いと思われがちですが、表板は、現代に比べて、やはり薄い。 ストラドよりグアルネリの方が見かけによらず、、隅々まで考えて作っているように思える。 気分を変えて、大切な食事の時に・・・・次回予告はピクルスを! ☆cremonakugaヴァイオリン工房では、ピクルスにはまっています。 写真は、自家製ピクルスです。 美味しいですよ! 塩分控えめです! ※追記・・・考えてみると、ヴァイオリンを作り始めグァルネリの方が好きだった!今はストラドが多いのですが、グァルネリには、別な魅力があります。 ガルネリは製作は、製作本数が少ないが、比べては申し訳ありませんが、私もきわめて少ないところだけ似ている。 ガルネリのように、少なくても完成度が高いヴァイオリンを製作していきたい。実は、ストラドモデルの方が作り慣れていますが、グァルネリモデルの方が、得意かも知れません。 なぜなら・・・・市場のガグァルネリモデルは、一般的に、形がグァルネリで、厚さは、ストラドもグァルネリも同じという作り方が多い。全体に裏板を厚くつくるくらいが多いようです。そして低音の鳴らし方、高音の鳴らし方が、難しいが、本物の良いデルジェズが少ないために、なかなか見る事はできません。けっこう見ているので、分かる部分も多かも知れない・・・・・ ご参考 ストラディヴァリウス グアルネリ デル ジェズを考える No2
by cremonakuga
| 2009-02-03 22:23
| ◆ストラディヴァリとグァルネリ
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