Cremonakuga violino
名器を作るための、ヴァイオリン製作タップトーンについて これは クガ・ストラドをタップしています。 (アントニオ・ストラディヴァリをタップし、情報を記録する様子、金庫室と同じ厳重な扉の有る部屋の中、独りで 静かに音を聞く・・・・セキュリティ上バックを消しています) ヴァイオリン製作などについて、私も含めタップトーンと言う言葉を良く聞きます。 良く、楽器屋さんが、ヴァイオリンを、指の関節で(中指の背を曲げ)カンカン叩く姿を姿を見ます。 何のためにタップするのか? その人、それぞれで、意味が違うかも知れません。 カンカン~と叩くのは 安い楽器のみにしてほしいです。訂正!いや安い楽器にたいしても失礼でカンカン叩く必要はありません。 これは感じる力と感性の問題です。 私の場合は、大きく2種類の方法を使います。 名器を持つ場合で 素手で持てる場合、事前に爪を切り、爪も滑らかにし、手もケアしておきます。 1、前の述べた方法の 中指の間接で、ごく軽くコンコンやる方法 名器にはしませんが・・ 厚い場所、硬い場所ほど、高い音が聞こえます。 狭いエリアの状況を把握することができます。 しかし、 名器などは、危険なので使えません。基本厳禁と考えています。また 所有者に失礼と考えます。 修理等の場合に例外はあると思いますが、固体差が大きくダメージを受ける楽器も有りうると思っています。・・・・ また、所有者に断る事が必要ですし、あまり良い行動には見えませんから、 自分の楽器のみにしています。 2、指に爪の背で、カチカチとごくごく軽く、耳を近づけ自分のみ聞こえる程度で音を出します。 ごくごく、微妙な、厚さ、硬さを、ごく狭いエリアで比較することができます。 名器などは、それでもキズを付けないようダメージを与えないので、これも使いますが、 やはり、変な姿なので、自分の楽器にとどめておいた方が良さそうです。 特に駒の後ろ、弦の下や、指板の可能な範囲の下、テールピースの脇奥など・・・横板など・・・ また、ニスの硬さを感じ取る方法にも使います。 名器に、近年処理されたカバーニスの硬さなど、いろいろな名器の音が、今も耳に記憶があります。 概して、硬くなく、柔らかいニスの音がします。 カバーニスの音は、プラスティクの様な感触です。 この事が出来ると、自作のバイオリンのニスが、厚い場所、薄い場所で、音響的に不具合が起きた時、直すことができます。 ストラドやデルジェズなどのレプリカを作ろうとすると、ニスも刷毛の塗り始めと終わりで音響的な差異が生じます。交互に反対から塗ったとしても0.1mmの厚さの差では、音響的に差異を生じます。 それを、総て、修正することができます。そうしないと、本来の音を再現できません。理論的にですが、そこまでする必要は無く、なぜならニスが剥げている現在でも良い音はします。剥げて良い場所 悪い場所も有り、良い場所が剥げて、今の音色を作っています。剥げて良い場所は、裏板中央分から下部にかけて・・・より鳴り易くなります。特に低音部が、表板ではトレブルサイドのアッパー・・・少し薄くなって補修しオリジナルから本の少しニスが薄い場合、高音が鳴りやすくなります。バロック時代の顎の当たる部分左右は、低音に効果があります。しかしヴァイオリン自体がベストな場合、反対の事が起きます。 横板の手の当たる肩の部分も ニスが取れると高音が優しい音色になります。ニスを補修すると再び張りのある音色に戻ります。それもオールド的な音色の要素となります。取れてはいけない部分アッパー肩の付近の裏板は 出来れば有った方が良く、裏のCの部分も有った方が良いです。音が弱くなるからです。しかしそこ自体が厚すぎる木材の場合は 取れたほうがよくなることもあります。ここは爪でタップし中央から滑らかな降下か わずかに強いのが良く、急に、硬さを感じる場合が、鳴りを止めている可能性があります。そういう判断が可能です。 この場合、指に爪の腹で、A~B~A~Cというように Aの次にB、またAに戻ってCに・・・・ そうすると、Aを基準にBとCが、どう違うか??はっきりと違いが分かります。 何度も、確認します。 ※ただし魂柱が立っているので、魂柱や、バスバー付近、横板など固定されたりした部分近くは、影響されますので、それもイメージして音を聞きます。耳が敏感になってくると、ニスの濃淡による音の差も感じとれます。 3、指の腹で撫でるという方法 同じ速度で、サ~!と撫でます。2、と同じように、一定の基点を基準に撫でその差を確認できます。 以前、ご紹介した、同じ大きさで、どの厚さで同じ音程になるか確認を、モミとカエデで、試した写真です。 個体差が大きいのですが、ヴァイオリンを作る時に、どういう厚さで、どういう状態かを体感できます。 この方法は、表面がザラザラしている時、白木の製作途中で有効です。ニスの表面が曇っているときは聞き取れますが、ピカピカでは無効です。 この方法も、人のヴァイオリンでは、おかしな姿なので、やめておいた方が良いようです。 4、中指の腹で、ごく軽く叩きます。 厚い=重い場所ほど、重く、低い響きを感じます。 薄い=軽い場所ほど、軽やかな高い響きを感じます。 広いエリアの質量が分かります。 名器では、主にこれを使います。楽器の全体のバランスが分かります。 表板の左右、上下の、どこが厚いか?薄いか? 裏も同様に・・・・ やはり、ごくごく軽く、耳を近づけて聞きますが、事前に断ることが必須です。 また、どんな響きの状態の時に良い音がするか、音量的に性能が良いか理解が出来ます。 沢山のストラディヴァリウス、ガルネリ・デル・ジェズをタップしました。 これらは、名器をタップで調べることで、自分の楽器を作る上で、同じようになるように、仕上げることができます。 名器をこのようにタップし調べることは 普通、なかなか出来ないと思います。 しかし、名器に限らず、良い音の楽器をタップすることで、良い音に共通したセオリーを体感することができます。 こうしたことの積み重ねが、単に、いろいろ厚さを替えて作るのみならず、きわめて大切であることを、沢山の名器を実際にタップしてきた、私Cremonakuga violinoは、今も実感しています。 なぜなら、同じ厚さでも、ほんのニスの一刷毛で、ダメになるのです。 それを、タップの響きの経験は、分からせてくれます。 この手法が自由自在に出来ると・・・ ヴァイオリンの4隅の重さバランス比較が可能になり狭い場所の厚さが、左右で比較できます。 これを頭でイメージすると、そのヴァイオリンの全体像が、頭にイメージ出来ます。 どういう音響的なヴァイオリンか??? この事を積み重ねることで、どんなバランスの時、どんな音になるか???共通している事が分かるようになります。 人により、高い音が、低く聞こえ、低い音が高く聞こえる場合がありますが、それは、いつも一定に決めれば良い事で、自分が分かれば良いのであって、厚い板、薄い板を、目を瞑って、当てられるように訓練すれば良いのです。 ある2つの音が、きわめて近い時、逆に聞こえる場合があり、失敗したことがあります。 タップする時、指を、一瞬で離すと、残響も聞き、間違える事がありますが、タップしたときそのまま押し付けると、残響が少なく、料理でいう、後味的な音の記憶が残る。そこで判断出来ます。 このような訓練をしたことで、実際の良い楽器に出会った時、許可が得られれば、優しく指の腹でポンポンとタップし、概要を記憶します。往々にして、リハーサル中とか、近くで、楽器の音が響く中で見なければならない事がありますが、耳を近づけて、神経を集中し、数分で、知りたい部分の確認を済ませ、すぐに手帳の記録しています。 過酷な状況下で、このような事を繰り返すうちに、どんな状況でも、短時間で済ませられます。会話をしながらでも・・・・・ 本来絶対音感が、有れば良いのですが、絶対音感は、・・・ 聞こえた音が、音階の どの音かわかる・・・(しかし弦を張った箱状態では 違ってしまいみな違う厚さも同じくらいに聞こえます) そのレベルも幅が広いようです。 ただ木片を叩くのは、いろいろな音が混ざっていて、 打撃音は、判読できないようです。 (楽器の箱で聞く場合は その響きの重さ=重量感、重いか?軽いか?の比較をし そのエリアがの密度を探ります。) 叩く場所が、良く響くように、そこを阻害しない場所を押さえなえればなりません。 単純な 打撃音は、絶対音感では分からない・・・・ 木片を叩く場合、その人で聞く音が異なるようです。 高い部分、低い部分・・・と 私の場合は、 ・・・は、ヴァイオリンのE/A/D/Gくらいしか分からない。 慣れでGから順にD/A/Eと音の順の高さは分かる、 調子が良いと、1Hzも狂わないが、調子が悪いと、狂う・・ あとは、エスプレッソコーヒーをマッキネッタ(アルミの器具)で淹れる時、 水が上がって、ポコポコと音がしてきます。 どこの音程で、火を止めるか・・ いつも決まっていますが、 どの音程か分からない。 つまり、私が思うには、どの音程か分からなくても、 どちらが高いか、また、この位の音程と いつも分かる、ことができれば、ヴァイオリン製作に十分と感じています。 なぜなら、1Hzの狂いも なくしても、ニスの狂いで、狂ってしまいます。 ストラディヴァリも、その点では大雑把ですが、大枠では、狂いが無いという事のようです。 この大枠、全体的に音響的にはまっている・・・ タップトーンは、とにかく慣れれば、出来ます。 30年も飽きずにタップしていれば、見えてきます。 その努力の結果 貴重な情報が見えてきて、得られます! 努力あるのみです。 門前の小僧・・・・習わぬ・・・ 同じ事を何回も執念深く、繰り返すと、身に付きます。 タップトーンとは、目的を達成するための、独自の手段です。 その作業の裏にある目標を、いかに発想力を持ちながら、クリエイトするかが無ければ、ただの手段で、 あって、意味を持たない。 これはアントニオ ストラディヴァリ Marie Hall-Viotti1709をタップしています。 鏡で逆さまになっています。 あくまで 私流のタップ活用方ですので、ご自分に合った分かり易い手段を見つけ出すと良いのではと思います。 ※最後に・・・いろいろタップのついて書きましたが、既存の名器や 良い音のヴァイオリンが どういう音響になっているか?それらを分かる一つの手法です。実際には、必ずしも、どこと どこを 音響的に合わせたり、しないと良いヴァイオリンが出来ないという事は言えません。極論では、どんなヴァイオリンでも、30分有れば、駒や魂柱や、弦をいじらず・・ガラっと名器の様なニュアンスに改善する事が出来ます。 あまり難しく考えなくても、良い音にする事が出来ます。裏を返せば、一瞬に悪い音にも出来ます。タップはその人 その人の感性で一つの手法として有効であり、確認作業の手段という事かも知れません。あまり重要ではないと考えます。 ニスのひと塗りで、音色が変化します。つまり厳密には経年でニスが取れれば音響は狂います。TVかどこかで聞いた話で、クレモナの古い名器は、楽器のどこをタップしても同じ音程になるように作られている・・は・・・まったく有り得ません。クレモナの古い名器は、どこをタップしても違う音がします。まったく逆です。また、まったく違う厚さの配分の個々に違う楽器も、似かよった音質に仕上げる事が可能です。だから名工なのです。信じられないかも知れませんが、量産品も一瞬に格段上級の楽器に変身させられます。 これらの地道な作業をした事で、後の実際の厚さを調べた時に 点が線になり音という空気繋がりました。作業の意味が生きてきました。今は必要がなくなり名器のタップはいたしておりません。人によりいろいろな切り口があります。これは私の場合です。 コンサートで音を聴いて 楽器の厚さ配分のイメージが沸きます。厚さ配分、タップトーンによる全体イメージ、実際の音楽、自分で弾いて音を出す・・・ そうした一連の点が、線に 面に・・・かけがえの無い大きな財産になっています。
by cremonakuga
| 2014-05-18 23:27
| ♪♪音の謎♪♪♯♭
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