ヴァイオリンの振動を考える

久我ヴァイオリン工房
Caffe o Te?
ヴァイオリンを製作する過程で、同じヴァイオリンの音色が、七変化することを経験する中で、
その弦の振動が、板をどう伝わるのだろう????と考えたことがあります。

振動が見えると分かり易いのですが、いろいろな研究で、振動数で、あちこちが浮いたり沈んだり、VSAの研究や、3D映像でも見ています。同じ楽器が、ニスの表面の違いで、聞こえ方が違う。
少し前に、音の艶について書きましたが、同じような変化、表面の違いで、経験できます。
1挺のヴァイオリンを作る時、そうした変化の中から、これだという音色でヴァイオリンをフィックスさせます。
ヴァイオリンを作る時、駒や、魂柱、弦、付属品をどうするかの前に、楽器としての完成をさせます。

①ヴァイオリンの材料の違い
②どんな形、厚さ、サイズ
③どういうニス、下地処理をするか、また硬さをどうするか?

・・・・・そこでヴァイオリン製作は完成したと思っています。

駒、魂柱、ほかは、ヴァイオリン製作のプラスアルファーです。


その中で、ヴァイオリンの表面を鏡のように磨いた時と、マットな時、同じヴァイオリンでも音質が大きく違う。
以前も描いたかもしれませんが、木材の内部を伝わる振動、表面を伝わる振動の波、空気を介して伝わる内部の振動。


表面は、マットな場合、マクロ的には、表面積が広くなり振動に時間がかかり、複雑になる。一方、鏡のような状態は、一直性の面で、伝わり方は速い。

耳で聞くと、その差が分かる。いずれにしても、表面は、平面のほうの音が、私は好きです。

このことは、微妙な音質であることは、確かですが、大切なことでもあります。

追記)一般的なヴァイオリンは、カテーナを付ける前は、左右対称ですが、カテーナが付いた状態で、高音側が鳴りやすくなるように、バランスがシフトしています。それをなるべく左右平均※になるようにさせると、独特な気品がでます。その状態から、高音、低音をコントロールすることのバランスが、大変微妙で難しい技術となります。この状態では、ニスの塗り方で、重いと左右が逆転も簡単にしてしまいます。いかに均一にニスを塗るかということは基本で、重要です。


※・・・この均等とは、意図したでこぼこが左右に点在しながら、平均値で均等という意味です。


艶とか、気品などを感じる時、一番分かり易いのが、モードで言う、M-1の4か所の質量が完全に合っているときです。4か所を1Hzも違わないように合わせると、その時、聞こえる響き、M-1の響きは、とても美しく響きます。表、裏ともそういう状態に仕上げると、レベルが違う楽器が出来ます。もちろんカテーナが付いた条件下です。この作業は、耳でしかできません。

つまりカテーナをどういう形状にするかも大事ということになります。カテーナの形状は、表板の厚さの変化に自然に添わせる形が良いと思います。そうすると、カテーナが無い時と付いた時のバランスの差が少なくなります。
カテーナは、表板の厚さに合わせず、中央山型にしても、結果は、悪くはならないと思いますが、前者がより良いと思います。
特に低音が、滑らかで優しく品がある音質に出来ます。高音も同じように品が出ます。

ジプシーヴァイオリンの音が、情熱的で・・・と言うならば、その真逆を行く音色になります。
それだけが、音に基本、艶を持たせる方法だけではありませんが・・・・・・
とても難しい、専門的な、お話になってきました!

ヴァイオリンで、オールドヴァイオリンの音を再現などという言葉を良くききます。私も使いますが、オールドヴァイオリンとひとくくりにするのと、クレモナオールドとは別に分けたい。クレモナオールドに限っては、板は、どこもかしこも厚さがマチマチで、高音低音中音程・・・すべてを考え、熟知しコントロールしている。私も300年前の師匠達から そういう事を学び製作しています。板は、総てが同じように振動せず、強く振動する部分、弱く振動する部分、それをおのおの補完する部分、厚い部分あり、薄い部分あり、なめらかなカーブ有りキツイカーブ有り・・そこから振動の縦波が発生します。


※ヴァイオリンの音のそば鳴りについて・・・意味は耳元で大きく聞こえ、音が遠くへ届かない事を言うのだと認識していますが、
①全体に平均して薄い構造・・・・厚い部分も無いと、強く振動しない・・・改善不可能
②魂柱が短く、表板が下がっている楽器・・・裏板に振動が伝わらず、表板は、低音中心に良く鳴るが振幅が弱い・・・魂柱を長いのに交換で復活する。
③表板だけ薄い楽器・・・・・裏板が一緒に振動しないで、表板のみ振動している・・・・・裏板も合わせて適度に薄くすれば良く振動し改善可能。
④ニスが硬すぎるヴァイオリン・・・耳元では良く聞こえるが、飛ばない・・などなど倍音の関係・・ニスの上から柔らかいニスを塗るか、少し磨き削り、柔らかいニスを塗ると改善する。
⑤振動の縦波の振幅が弱い=遠くへ飛ばない・・・構造的なので、普通の人では直せないが、直せないこともない・・ぜんぜん別なヴァイオリンになってしまう。当然、削ったり、足したりすることになる・・とんでもない修理になる。やらない方が良い。

蛇足・・・
⑥横板が厚過ぎる・・・表と裏の振動が横板で遮られならない・・・これは単に鳴りにくいヴァイオリンですね!・・・・外から横板をそぎ、ニスを塗りなおせば鳴るようになる・・・・が、表板を剥がさねばならない&ニスを塗り替えなくてはならないので、痕跡が残る可能性が高い。

表板を剥がさなくても削った経験からは・・・外からタップし、一回り同じ音程煮るようになるように少しずる削っていく。厚さを測らなくても出来るが、通人では不可能。 穴を開け、後悔するのが目に見えます。




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by cremonakuga | 2013-02-14 20:20 | ♪♪音の謎♪♪♯♭ | Trackback | Comments(0)
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